NBA選手は皆一流選手だが、自分用のシューズがつくられ、そのシグネチャーモデルが一般販売されてこそ、スターの中のスター、超一流選手と言えるのではないだろうか。
そういうシグネチャーモデルで大成功し、莫大な富を築いたのがマイケル・ジョーダンだ。彼が活躍していた時代、NBAのシューズ規制はきわめて厳しかった。
これは、ジョーダンがNBAに入りたての頃の話だ。
彼とタッグを組むナイキは、才能ある彼のシューズをとにかく売りまくりたかった。
しかし、大きな敵が立ちはだかる。
それがNBAの規制だった。
今以上にバッシュのカラーリングに厳しかった、異常なほどに厳しかった当時のNBAは、ナイキが売り出そうとしているジョーダンのシューズに待ったをかけた。
「そんなに色が使われてるバッシュはダメだ!」
「そのカラーのシューズを履いたジョーダンは試合に出させないよ」
そのシューズを売りたいナイキからすれば、ひどい話だった。
ジョーダンがそのシューズを履いてNBAで活躍してこそ売れるのに、それを禁止されてしまっては打つ手なし・・・
かに思えた。
しかしナイキは、起死回生の策を思いついたのだ。
ジョーダンは撮影スタジオで禁止されたシューズを履き、シカゴブルズのジャージではないが、ブルズカラーの赤と黒のウェアを着てボールを持ち立った。
そして、こういうナレーションがつけられた。
「9月15日、ナイキは革新的なバスケットボールシューズを開発した。10月18日、NBAはそれを禁止した。幸いなことに、あなたたちが履くことをNBAは止められない。エアジョーダン、ナイキ」
AIR JORDAN 1 COMMERCIAL: Banned! (1985)
このCMが大当たりして、エアジョーダン1は爆売れした。
エアジョーダンシリーズを筆頭に、シューズを売りまくったナイキはシューズメーカーとして不動の地位を確立した。
今のNBA選手にとって、シューズメーカーとの契約は、人気面や収入面で重要で、どこのシューズメーカーと契約するかは、プロ選手の一生を左右すると言っても過言ではない。
シューズメーカーにとっても、人気になれる才能ある選手との契約は、喉から手が出るほど欲しいもので、逸材に熱い視線と激烈なラブコールを送る。
NBAドラフト指名確実と言われている日本人プレーヤー八村塁もその一人だ。
ナイキやアディダス、アンダーアーマーといった海外企業や、アシックスやミズノといった日本のシューズメーカー、さらには中国企業まで八村塁争奪戦に加わっているという話だ。
どこと契約するにせよ、彼の成功を最大限サポートしてほしい。